法多山 蛸薬師御縁日と歴史|病気平癒・健康長寿のご利益と再建の歩み
法多山
蛸薬師御縁日とは

静岡県袋井市にある法多山尊永寺では、病気平癒・健康長寿のご利益で知られる薬師如来をお祀りする「蛸薬師(たこやくし)」の御縁日が毎年行われています。
令和7年の御縁日も、境内の落ち着いた空気の中で厳かに執り行われました。
蛸薬師は全国的にも数が少ない珍しい仏さまで、特に皮膚病平癒のご利益で信仰されています。蛸は再生や柔軟性の象徴とされ、その姿や由来が病気平癒の祈願と結びついたと伝えられています。
法多山における蛸薬師信仰は、江戸時代から続く長い歴史を持ち、地域の人々の心に深く根付いています。
蛸薬師堂の起源と移転の歴史

江戸時代、蛸薬師堂は現在の赤い橋の東側、今ではお手洗いが設置されているあたりに建っていました。当時の参道を行き交う人々が立ち寄り、病の平癒を願ったといわれています。
明治時代になると、寺院の統合や境内の整備が進み、蛸薬師堂は本堂の中段へと移されました。現在の本堂すぐ下にある休憩所付近がその場所です。この位置は参拝の途中で立ち寄りやすく、多くの人々に親しまれてきました。
平成27年の再建と宮大工の技
年月を経る中で、蛸薬師堂は老朽化が進みました。簡易的な造りであったため耐久性に難があり、建て替えが必要になったのです。
平成27年、この再建を担ったのが宮大工の飛鳥工務店です。伝統的な寺社建築の技術を駆使し、木材の組み方や細部の仕上げに至るまで丁寧な作業が行われました。新しい堂は、境内の景観と調和しながらも堅牢で、長く地域の信仰を支える造りになっています。
江戸時代から受け継がれる蛸の彫刻
堂内に入ると目を引くのが、江戸時代から伝わる蟇股の彫刻です。
再建の際もこの彫刻はそのまま移され、木肌を残す形で保存されました。長い年月を経ても力強さを失わず、蛸薬師信仰の象徴として今も参拝者を迎えています。
住職が説く健康と命の大切さ

御縁日で、住職は自らの体験を交えて健康の尊さについて語りました。
「私も年齢を重ね、定期的に健康診断を受けていますが、数値が思わしくないこともあります。食べたいものばかり食べ、運動をせずにいると、必ず体に現れてきます。」
健康は偶然に与えられるものではなく、日々の心がけによって守られるもの。住職は、私たちの身体は両親からいただき、ご先祖様からつながり、最終的には仏さまから授かった尊い命であると説きます。
仏さまと命のつながり
「身体を粗末に扱えば、その影響は健康に現れます。食事・運動・休養など生活全般が身体の管理であり、それは仏さまへの感謝を示す行いでもあります。」
この考えは、現代の健康管理にも通じます。生活習慣を整えることは、単なる自己管理にとどまらず、信仰を実践する行為でもあるのです。
蛸薬師堂での参拝では、「病気になりませんように」「健康でありますように」という願いに加えて、
「この身体を大切に使います」という誓いを仏さまにお伝えすることが勧められています。
願いと誓いは表裏一体であり、日々の行動によってこそ信仰は実を結びます。
蛸薬師御縁日は、健康を祈る日であると同時に、自分の生活習慣や命のあり方を見直す節目の日です。
江戸時代から続く信仰、平成27年の宮大工による再建、そして堂内の蛸の彫刻――これらは法多山の歴史と地域文化の結晶です。

法多山尊永寺の蛸薬師御縁日は、病気平癒・健康長寿を祈願するだけでなく、自らの身体と命を大切にする誓いを新たにする日です。
参拝の折には、堂内の蛸の彫刻をじっくりと眺め、その長い歴史と信仰の重みを感じてください
2025.08.08

